遠い事業成立ライン

前回のあらすじ

新型コロナウイルス感染症の流行は、その終息時に旅行の需要が明確に伸びるイベントであると考えた。非常に高い確率で特定の需要増が予想できるチャンスはそうそうないこと、25歳という世間的には若いタイミングで機会が巡ってきたことなどを踏まえ、起業を決意した。

 

2週間ほど布団の中で考え込み、既存の日本語ネイティブアプリに存在しないものを考案。機能の使いやすさ、必要性、需要について検討を行い、エンジニアを確保するための簡単な説明資料を用意した。

 

知り合いのITエンジニアで協力してくれそうな人を見繕い、SNSで一本釣りをした。

 

今回は事業成立にはどれだけの粗利、シェア率が必要なのかという計算をした記事だ。

 

前回記事の最後に「次回、エンジニア確保~開発開始まで」と書いていたようだが、そんなことは忘れた。そもそも、この前回のあらすじの内容すらだいぶ異なっている。

 

事業成立ラインの計算

収益を得る方法

私たちが作成する予定のアプリ自体は、SNSとオンライン旅行会社(OTA)を混ぜたようなものになる。ここで問題となるのが収益を得る方法だ。

 

OTAの具体的な例としては、楽天トラベルBooking.comなどが挙げられる。

これらのOTAは、サイト経由で宿に予約が入るとその料金の10~25%を手数料として頂戴するビジネスモデルだ。

 

日本で、このOTAビジネスをするには旅行業法上の認可を受け、旅行業者としての登録をしなければならない。

 

旅行業者は取り扱う旅行の種類によって細分されるが、どれも営業保証金や基準資産、旅行業務取扱管理者の設置などが求められる。この中で最も問題となるのが旅行業務取扱管理者の設置だ。年1度の試験は申込日が7~8月の初旬であり、構想時点でタイミングを逃し1年以上の先送りを迫られたのである。

 

追加で旅行業務取扱管理者を雇い入れるのは、資格者の権限が高くなることや採算ラインの上昇などあまりにもリスクが高い。一方で、私が資格を取得できる22年11月まで事業展開をしないのは、感染状況の見通しから考えても旬を逃してしまうだろう。

 

そこで、旅行業法ではアフィリエイト広告について旅行業者以外が展開することを規制していない点に着目し、当初はアフィリエイト広告による収益化を目論むことにした。

 

一般にOTAのアフィリエイト報酬は1~5%だ。特に報酬率が高い海外OTAに誘導し、3~5%の広告報酬を受け取る。資格を取得し、旅行業者になり次第、直接のOTAとして10~12%の手数料で収益性を上げていく方針とした。

 

このモデルだと、利益率が半分以下になるため、達成すべき売上のハードルが大幅に高くなる。そこで、アプリリリース後しばらくは状況を見て、後述の最低ラインを超える見込みが立ち次第起業するということにした。収益性の向上が見込める状態で最低ラインをクリアすることで、路頭に迷う可能性をできるだけ低くしたいという思いがある。

 

起業する!と宣言したところで稼げなければ意味はない。人生を壊したいとは言っていても、勝ち目のない勝負に向かうのは愚かだろう。

 

事業成立の最低ライン

超えるべき事業成立の月間最低ラインだが、

人件費:35万円×2人

その他経費:20万円

営業利益:10万円

計100万円

 

とてもざっくりとした計算で、月100万円の粗利があれば起業しても死なないだろうと試算した。

 

仮にアフィリエイト報酬を宿泊料金の4.4%と仮定したとき、必要な売上は、月間約2300万円。年間で約2億8000万円だ。

 

国内旅行市場が正常だった時期のじゃらん宿泊旅行調査2019によると、宿泊費の合計は2兆3175億円。つまり、国内旅行のシェア約0.01%を握ることができれば、従業員2人での事業は成り立つ計算だ。

 

金額ベースで考えたとき、正直無理だなと感じた。

 

一方で、在庫ゼロのビジネスであること、アフィリエイトなので宿泊予約部分のサービスの質は求められないこと、go to travel第2弾などで、アプリリリース時点での旅行需要は拡大を見込めることなどをもとにいくつかの展開を考え、勝ち目はそれなりにあると判断し、開発に進むことにした。

 

撤退目標

勝ち目はそれなりにあるが、負ける可能性もそれなりにある。個人的にハイリスクハイリターンは嫌いではないが、賭けるものは人生なので慎重にいかなければならない。

 

そこで、先にあげた最低ラインをリリースから1年間で超えられない場合は、起業せずにアプリ自体を開発してくれているエンジニアに譲渡することにした。目測を大きく外して月5~10万円を稼ぐアプリに着地しても、開発者の小遣い稼ぎにはなるので損はないのではないだろうか。

 

現状、私はアイデア以外で開発に一切寄与できず、多大な負荷をエンジニアにかけている。起業を決めてから法人化するまでの資金や広告費などは全額私が負担するが、それだけでは開発の対価には見合っていないだろう。できる範囲でのリスペクトは欠かしてはならないと常に感じている。

 

一度起業を志してしまった以上、成功するまで何回かは挑戦することになる。

いい関係性を築いて、地獄の底まで引きずり倒すつもりだ。

 

 

次回、開発に使用しているサービスについて